子供の腹痛は、小児の救急医療でも3番目に多い頻度の高いものです。
子供が腹痛を訴えたとき、便秘かな?今流行っている胃腸炎かな?などと思うことが多く、大概はそれで正解なのですが、中には怖い病気が隠れていることがあります。
また、乳幼児の場合は、お腹が痛くても腹痛を訴えることができません。不機嫌、哺乳力の低下、激しく泣く、顔色が不良であるといった変化から親は子供の訴えを察知しなければなりません。
一般的に、6時間以上続く腹痛は、外科的疾患が多い。つまり、手術が必要になることが多いのです。
今回は、怖い腹痛にはどのような病気があり、どういうときにそれらを疑うのかについてまとめました。
腹痛で一番多い原因は便秘
特に機能性便秘、習慣性便秘が多いとされます。機能性便秘は離乳食開始以降に起こりやすいと言われています。
そして、頻度の高い便秘症ですが、子供の場合、大人より症状が非常に強いことがあり、激痛を訴えることがあります。
また注意すべき点として、便が出ていても、便秘症のことがあるということです。特に、コロコロとしたうさぎの糞のような便が出ているときにはこのようなことが起こります。
医療現場では、便秘のときには、グリセリン浣腸を用います。
グリセリン浣腸の量は体重あたり1-2ml使用します。
体重が10kgなら10-20ml使用するということですね。
関連記事)幼児の一週間の便秘!病院にいくべき?体験を踏まえて!
見逃してはいけない5つの病気
次に、見逃してはいけない5つの腹痛についてです。
- 虫垂炎
- 腸重積
- 精巣捻転
- 鼠径ヘルニア
- アレルギー性紫斑病
それでは一つ一つ見ていきましょう。
虫垂炎
虫垂炎は、いわゆる「盲腸」と呼ばれる病気ですね。厳密には盲腸の近くにある虫垂という管構造に細菌感染を起こす病気です。
大人の場合は右の下腹部痛が症状の特徴ですが、子供の場合は症状がわかりにくいことが多いです。
高熱を来すこともありますが、38度程度のことが多いと言われます。
学童期>思春期>乳幼児期の順番でよく起こります。
そして子供に虫垂炎が起こった場合は、虫垂の壁が薄かったり、大網が未発達のため、大人よりも進行が早く、虫垂が破れて腹膜炎を起こしやすいという特徴があります。
診断には、腹部の超音波検査(エコー)が必要です。この検査で虫垂が腫れているのを確認します。そのほかに、採血なども検査されます。炎症反応や白血球数が増加しているのが一般的です。
腸重積
腸管の中に腸管が入り込むという病気です。
2歳未満が8割を占め、特に生後4-9ヶ月に多いと言われます。3ヶ月から6歳までの腸閉塞の原因として最も多いのです。
症状は、不機嫌(泣いたり泣かなかったりを繰り返す)>嘔吐>血便(イチゴジャム様の便)>腹部腫瘤(右の上腹部)という順番に多いと言われます。
発症したばかりでは、嘔吐・血便・腹部腫瘤の3つが揃うのは2割程度と言われています。なので乳児の不機嫌・顔色不良には要注意です。泣いたり泣かなかったりを繰り返すことを医療の現場では「間歇的な啼泣」という表現を使います。
イチゴのジャムのような便というのがこの病気には非常に特徴的ですが、血便がなくても腸重積のことがあり、疑ったら超音波検査(エコー)による検査が必要となります。
腸管の中に腸管が入り込んでいる様子をターゲットサイン(標的の的のようにみえる)、シュードキドニーサイン(腎臓のようにみえる。)と表現されます。
(ターゲットサイン)
参考記事)乳幼児の腸重積の症状は?治療は?体験談を踏まえて!
鼠径ヘルニア
足の付け根のところから体の中の構造物が脱出する病気で、男児は腸管が出ることが多く、女児の場合は卵巣が出ることもあります。
腸管が出ることが多いので脱腸とも言われます。脱腸なら聞いたことがある人も多いかもしれません。出ると言っても皮膚のしたで起こっていることですので、足の付け根が腫れているように見えます。
1歳以下の男児に多く、半数は1歳までに発症します。
脱出しても手術までが必要になることはまれで、容易に戻るものがほとんどです。
出て戻らなくなることを嵌頓といい、全体の7%程度、1歳以下で15%に起こるといわれます。嵌頓すると腸管への血流が途絶えるため早ければ3,4時間で腸管が腐ってしまいます。長時間の嵌頓では緊急手術の適応となります。ですので、いつから発症したのかをチェックして医師に伝えることが重要です。
精巣捻転
精巣(睾丸)がねじれてしまう病気です。
突然の痛みや精巣(睾丸)の腫れで発症します。ねじれるのは精巣ですから、おちんちんのすぐ隣なのですが、症状としてはこの場所が痛いという以外に、右下腹部痛や胃が痛いなどと言うことがあります。
思春期に多いですが、あらゆる年齢で発症します。
精巣機能温存(将来子供を作るための機能)のためには、発症6-8時間以内の整復が必要とされます。
自然にねじれが元に戻ることもありますが、手術が必要になることもあります。病院に来るまで可能ならば氷で冷やしながら受診するのがベストです。
アレルギー性紫斑病
特徴的な皮疹が下肢や臀部に出現し、また腸管に炎症を起こすので、腹痛や下血といった症状がでる病気です。
3-7歳に起こりやすい病気です。
[adsense]
最後に
お腹の痛みを訴えたり、足の付け根が腫れてきたり、皮疹が出てきたりすると、病院へ連れて行こうと思いますが、症状を訴えない(訴えられない)赤ちゃんや乳幼児の場合には注意が必要です。
いつもと違う、何かおかしいなと思ったら、ここに挙げたことを参考にしてみてください。
by kudi