子供の嘔吐というのは、救急外来を受診する子供で熱に次いで多い症状です。流行りの胃腸炎でしょ、と思っていたら思わぬ脱水になっていたり、後ろに怖い病気が隠れている可能性もあります。
ここでは、子供の嘔吐下痢を見たときに、どのようなところをチェックすべきかということを見ていきます。
基本的に症状が強い場合は医療機関を受診されることをオススメしますが、どうしても家で見ないといけないときなどのヒントになれば幸いです。
嘔吐の子供を見たらチェックするポイントは?
①意識の異常はないか?
低血糖や高血糖で意識障害になることがあります。意識状態が悪いと思ったらすぐに医療機関を受診しましょう。
②循環不全はないか?
皮膚の色は悪くないかをチェックしましょう。悪いと思ったらすぐに医療機関を受診しましょう。
またこれは基本的に医師が行うことですが、ご家庭でもできます。CRT(capillary refill time)といって、爪を押して色が戻るまでの時間を見ることで脱水の有無をチェックすることができます。この時間が2秒以上かかると脱水があると判断します。
特に嘔吐に下痢を伴っている場合、脱水になりやすいので循環に異常をきたす事があります。
単に爪を押さえて、色が戻るまでの時間をチェックするだけなので簡単です。これで脱水の有無をチェックできるんですね。
③脱水はないか?
上の②と被るところがありますが、
- 涙が出ているか?
- 呼吸状態はどうか?
- 皮膚のツルゴール(皮膚の張り)はどうか?
- 口の中や脇の下が乾いていないか?
- CRT(capillary refill time)が2秒以上かからないか?
といったところをチェックしてください。
脱水があればどうすればいい?
特に下痢を伴っており、脱水があると判断したら、水分を摂取させる必要があります。飲めない場合は、すぐに医療機関を受診してください。
与える量ですが、
で与えます。
つまり、体重10kgならば(10×50=500,10×100=1000ですので)4時間かけて500ml-1000ml水分を摂取させる必要があります。結構な量ですよね。
ただし、いきなりたくさん飲ませると吐いてしまうことがあるので、最初は少しずつゆっくり与えるようにしてください。量の目安としては最初はペットボトルの蓋くらいの量でいいと言われています。
与えるものは、この経口補水液OS-1が最もよいですが、ない場合はポカリスウェットやアクエリアスなどを半分くらいに水で薄めて与えるのもありですね。
そもそも嘔吐下痢の原因は?
- 胃腸炎(最も多い)
- 虫垂炎
- 腸重積
- 髄膜炎
- 代謝性の病気
といった病気が原因となります。最も多いのは、ウイルス性の胃腸炎です。
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重症になりやすい嘔吐下痢は?
それは、髄膜炎、腸重積、代謝性の病気です。
重症な嘔吐下痢になっているかどうかについては、子供の背景をしっかりと医師に伝えることが重要です。
具体的には
- 吐物、便の頻度・期間
- 直近の体重や体重減少の有無
- 食事内容、最後に尿をしたのはいつか?
- 周囲で胃腸炎などははやっていないか?
- 基礎疾患が何かないか?
といったことを聞かれることがありますので、子供やその周りの状態をしっかりと把握しておくことが重要です。
また嘔吐以外に何か症状があれば、これも伝えるようにしましょう。
- 嘔吐+頭痛→髄膜炎の可能性あり。
- 繰り返し嘔吐している。→腸重積の可能性、先天性の代謝の病気の可能性あり。
- 嘔吐+腹痛→腸重積、虫垂炎の可能性あり。
- 嘔吐+血便→腸重積の可能性あり。
- 嘔吐+呼吸が早い→先天性の代謝の病気の可能性あり。(アシドーシスを補正している。)
という症状の組み合わせで、胃腸炎以外の疑われる病気があるからです。このような症状の組み合わせがあれば、医療機関をすぐに受診するようにしましょう。
最後に
大人でも嘔吐下痢は辛いものです。水分を自由に摂取できない子供ならなおさらのこと。特に嘔吐下痢は脱水になりやすいので注意していただきたいのと、脱水になっているかどうかをチェックすることができますので、上にあげたポイントを参考にしてください。
いつもの胃腸炎、と思っていると怖い病気が隠れていることがあります。嘔吐以外に何か症状はないのかもよく見るようにしましょう。
そして、嘔吐下痢のときには、他人にウツる可能性がありますので、手洗いは、子供も大人も徹底しましょう。
by kudi